今回のポイントは次の3点です。
・債権の消滅時効期間はどのようにかわったか。
・不法行為債権の時効についてはどうなったのか。
・生命・身体に対する侵害による損害賠償債権について独別な扱いとはどのようなものか。
1 原則【債権の消滅時効の起算点と時効期間の統一】
(1)債権の消滅時効/主観的起算点から5年間(短期)・客観的起算点から10年間(長期)
債権は,原則として,次の1号又は2号の場合に時効により消滅すると改正されました(166条1項)。
- 1号 債権者が権利行使をできることを知った時から5年間行使しないとき
- 2号 権利行使できる時から10年間行使しないとき
例外として後述の2.3.の場合を定めています。
(2)職業別の短期消滅時効及び商事消滅時効の廃止
改正前民法170条から174条及び商法522条は削除され,職業別の短期消滅時効及び商事消滅時効の廃止され,不法行為債権以外の債権の消滅時効の起算点と時効期間は(1)に統一されました。
2 例外その1【不法行為債権の消滅時効】
(1)不法行為債権の消滅時効の起算点と時効期間の維持
改正法724条は,不法行為債権は,次の1号又は2号の場合に時効により消滅するとして,改正前民法724条の起算点と時効期間は維持しています。
- 1号 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
- 2号 不法行為の時から20年間行使しないとき
(2)長期20年の場合も除斥期間ではなく消滅時効期間と規定
不法行為の時から20年間行使しないときという長期について,除斥期間としてきた判例の立場を採用せず,消滅時効期間であると規定しました。
3 例外その2【人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権】
改正法は,人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権については,債務不履行に基づく債権についても,長期消滅時効を客観的な起算点から20年間とし(167条),不法行為債権についても短期消滅時効を主観的起算点から5年間としました(724条の2)。
その結果,人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は,債務不履行に基づく債権であるか,不法行為に基づく債権であるかを問わず,主観的起算点から5年間,客観的な起算点から20年間としました。